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2017年11月20日 (月)

オーウェン・ジョーンズ「チャヴ 弱者を敵視する社会」

普段男らしいゲイがお酒の席などでつい女性言葉(いわゆるオネエ言葉)を全開にすることを「ホゲる」と言います。

で、基本シミルボンさんでは他者への礼節を忘れず「ですます調」の文体を使う僕ですが、オーウェン・ジョーンズ著、依田卓巳訳「チャヴ 弱者を敵視する社会」については冒頭で思い切りホゲさせて頂きます。

なんなのよ~! これ「敵視」とかじゃなくて単なる「いじめ」じゃん、どうなってんのよイギリス、やってらんないわよ~!

ハア、ハア。すっきりした。
いえ、本書は2012年にイギリスで初版がその後手直しを入れた物が出て、今年日本で翻訳された物が出てネットニュースで取り上げられていたのですね。
で、イギリス在住の方から「本国でも評価が高かった」と教えて頂き、購入した次第。

で良書でした。抜群におもしろい。
でも内容が凄い、というかひどい。もう敵視と言えばいいのかヘイトと呼べばいいのか、単なるいじめなのか、もう怒るの通り越して笑いながらホゲちゃいますよ、やってらんな~い!

と投げ出すわけには行きません。だって皆さんにお薦めしたいから。
とは言え、分厚く内容の密度の濃い本なので、僕のご紹介はごく浅いものだとご理解ください。一生懸命書かせて頂きますけど。

まず皆さん思っておられると想像します、「チャヴってなんじゃらほい?」

チャヴとは

急激に増加する下流階級

ということになりますが、ろくに英語の発音ができず安いスポーツウェアやパーカーを着てフードを被り、公営住宅に住み働かず福祉を食い物にし、ナイフを持ち歩いて10代で子どもを生む、みたいなイメージが定着しているそうで、これは誤りだということを著者のオーウェン氏は丹念に恐るべき粘り強さで証明して行きます。

そもそもチャヴ・ヘイトが始まったのはそういう言説を垂れ流すサイト「チャヴス・カム」が開設された2003年。
このヘイトにブレーキが利かなかった一因として、「無知な白人労働者階級から移民を守るため」という口実があったようですが、巷間言われるほどの移民差別を白人労働者階級が本当に行ったのかどうか。
チャヴ・ヘイトは名門大学内などで起こりやすいと著者は記しますが理由は次の通りです。

オックスフォードのような場所には、チャブ・ヘイトが広まりやすい。学生の半数近くが私立校出身で、労働者階級から大学に進んだ者はごくごくわずかだからだ。つまり、彼らは下流階級の人々と接したことがほとんんどない特権階級なのだ。よく知らない人のことを馬鹿にするのは簡単だ。

もうやってらんないわよ~!オカマも知られてないから馬鹿にされるのよね。フン! 普段、細心の注意を払って使用しないホモとかオカマとか差別のニュアンスを含みかねない言葉を思わず露悪的に使っちゃうわよ~、チャヴが他人と思えなくて。

すいません取り乱して。本筋に戻ります。

チャヴというより労働者階級がこのように貶められる始まりはサッチャーの政策によると著者。
1984年に廃坑計画を立て労働者たちのコミュニティが崩壊、代わりに不動産を買って中産階級になれという政策、それで貧乏なら彼ら自身が失敗したからだという理屈。

どっかで聞きましたね、 自 己 責 任 に通じる理屈。
そんなサッチャーさんの有名な言葉、

社会などというものは存在しません。個人としての男と女がいて、家族があるだけです。

若い頃そうなのかーって、すっかり騙されたよ! あるよ、社会!

あと移民への待遇と昔からイギリスに住んでいる自分たちへの待遇が違うという不満が労働者階級にあるのは事実みたいです。
でも例えばブレイディみかこさんのイギリスの底辺に関するご本を読んだり、また本書でも、移民と下流階級に表立った対立があると書いてあった記憶はないんですけど、僕。
ちょっとここら辺は本を読んだだけでは分からない、肌で感じる部分がないので保留しますけど、うーん、微妙な問題ですよね、うかつに分析も断定もできない。

それで、著者はリチャード・ウィルキンソン、ケイト・ピケット共著「平等社会」の内容、

不平等が進んだ社会ほど犯罪や疾病など社会問題をより多く抱えていることを示している。

を紹介するのですが、ベテラン議員は「くだらない」と退けてしまったとか。
僕の読み方・解釈ですが、どうもチャヴはキャメロンやブレア、政治にとって都合のいい生け贄として利用された感じです。
「我々は充分な政策を行っています。貧しいのは彼ら自身の責任なのです」って感じでしょうか。

ブレイディみかこさんは「子どもたちの階級闘争」で

EUは欧州国どうしの戦争は終わらせたが、人間対資本の戦争を引き起こしたように見える。それはじりじりと進行し、まるで当然のように人間が負け続けているが、いったいこんなことがいつまで続くのだろう。

と書き、笙野頼子さんは野間文芸賞受賞作「未闘病記」で「私の本当の敵を突き詰めて行ったら世界経済だった」という趣旨のことを書かれておられ(すいません、正確な引用をしたいのですがどうしても本が見つからなくて。ごめんなさい!)、そして本書の帯には

イギリスがたどった道は日本がこれから歩む道

の惹句が。
うん、今後薬物やアルコール依存の問題はもっと増える気がするし、この前テレビで特集していましたけど、文字の読み書きをできない若者が増えているとか。
介護施設で働いていたとき日本語の読み書きができない利用者がおられたけど、優しくて善良で働き者だったのに生涯貧乏なさっていましたね。
それに、僕が知らないだけでこうした現象は世界のあちこちで見られるのかな、きっと。

本書において著者は訴えます、「ヘイトより希望を」
努力すれば生活がよくなる、仕事が見つかる、そういう希望がなくてどうして馬鹿にされ続けた人間が立ち直ることができますか。
それに言うじゃない、「情けは人の為ならず」って。 自分のためにも希望のおすそ分けしましょ~ 、いま苦しんでいる人がいたら。
もちろん立派なこと言う資格なんてアタシにはないけどさ、それでもできる範囲でさ。
最後までホゲが止まんなかったわ。

あ、これは余談です。
90年代くらいまでは、著者も言う通りオアシスとかスウェードとか労働者階級から優れたロックバンドが登場したり、「トレインスポッティング」みたいな映画が生まれる余地があったんですね。

でも今は敵が世界経済、売れない物は出版社やレコード会社は売らないし、でも売れる物と文化的価値を有した物って必ずしもイコールとは限らないし、でも幸い自分たちで電子書籍とか動画とか出せる時代、ゲリラ的に表現を世に発している人々は、今後どんどん増えるんでしょうね。
なんか今さらな予想をしちゃったわ。

あとこの記事は骨の部分だけ書いていて、チャヴがどう差別されたのか、どういう詭弁や欺瞞の元に差別が正当化されたのか、肉の部分は書いていないので、ご興味ある方は手に取って味わってちょうだい。極上よ。最後までホゲホゲ。

 

(初出・シミルボン、一部加筆)

2017年11月17日 (金)

ファンアート頂きました。感涙!

「いつか誰かがドアを蹴破って僕を襲うのだと思っていた」、略して「いつ誰」の主人公、本田おりがみと、たーさんの絵を読者の方が描いてくださいました。
初めての経験だし紛れもなくおりがみとたーさんで、ちょっとうるるとするくらい嬉しいです!
Aさん、ありがとうございます!
全16章のただいま第4章まで。
毎日17時更新。よろしくお願い致します。
Photo

2017年11月14日 (火)

「いつ誰」連載開始しました。

カクヨムにて「いつか誰かがドアを蹴破って僕を襲うのだと思っていた」連載開始です。
病と闘う本田おりがみ、ゲイ、26歳、早漏の半生をギャグと切なさ一杯に描きます。
略して「いつ誰」。
8万字超え、全16章、ゼロコン参加作品。
どうぞご贔屓の程よろしくお願い申し上げます.
m(__)m
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2017年11月11日 (土)

「DEKAI尻 弄り隊」配信しました。

ヤッてりゃ幸せ、プロレスラー似のやんちゃ料理人が二十歳の純朴青年に恋をした!?
バディ2017年6月号に掲載された「DEKAI尻 弄り隊」に書き下ろしの二話三話を加えたハートフルで笑うポルノをKindleとして配信しました。
2月位までアンリミ、よろしくお願い致します。
Photo

2017年11月 9日 (木)

薬物と貧困

僕自身ギャンブル依存の手前まで行ったのでどの口が言うって感じなのですが。
どうにも薬物依存への嫌悪感が拭い去れないんです。

・アルコールやギャンブル、買い物などに比べて薬物依存って罹患に至る時間が短いので怖い。
・薬物により物騒な事件を起こした者の印象が強い。
・最も嫌悪を呼ぶ理由はこれ、後述しますが、勧めてくるから。

しかし薬物依存が病気であること、現在は責めるより止めるようサポートする流れが世界では主流になり、日本でもそうした活動をなさっている方々がおられることなどは知っていました。

でも拭い去れない嫌悪感。これと向き合うには知識が必要だわ。
ということで上岡陽江+ダルク女性ハウス「生きのびるための犯罪(みち)」

「犯罪」と書いて「みち」と呼びます。
こちらでは三人の女性が薬物依存に罹患した経緯、生い立ち、ダルクと出合って感じたこと考えたこと、変わったことなどを前半で語ってくれます。
後半では依存症患者の人権であり、依存症の母親を持った子供へのメッセージなどで構成されています。
本書は元々児童向けに書かれているので僕のような門外漢にも理解しやすい簡単な言葉で、深い内容が記されていました。

それで薬物依存者の全員がそうというわけではないのですが、本書で生い立ちなどを語ってくれた女性たちの過去、依存に至る事情には胸が痛みます、やはり虐待やネグレクトからサバイブして……。

繰り返しますが薬物依存症患者の全員が辛い過去を持っているとは限らないでしょう。
しかし責めて事態はよくならないということは思い知りました。

次はサポート機関などを利用して薬物を止める努力をスタートすることですが、難しいなと思うのは、西原理恵子、月乃光司、吾妻ひでお「実録! あるこーる白書」を読むと、下手に手助けしないほうがいいらしいんですね。
酒を飲みすぎてウンコ漏らしたら処理をしてはいけない、自分でウンコを掃除して汚れた衣類を洗濯する、そうやって自分で自分の責任を取らせないと、本人は依存症だと自覚できず病状は悪化するらしいです。

また依存症は「底つき」というらしいいですが、本人が「これ以上下はない」と思い知ったとき、はっきり言えば「私死ぬ」と自覚しないと中々断酒を始められないとか。

話を薬物依存に戻すと、僕みたいな素人が下手に助けようとすると、事態を悪化させそう。
端的に言えば、薬物だけではなく僕にも依存してきそう。

そう、ここで最も嫌悪感の強い理由、「なぜ薬物依存症患者は薬物を勧めてくるのか」について、素人考えを書きます。

1・資金源(言及しません)
2・キメた性行為は凄いらしい(セックスで人生を台なしにする気はございません)
3・これは本当に僕の偏見なんですけど、依存している者も行く道は地獄と薄々勘づいていて、道連れを作ろうとしている、と感じたことが人生で二度ほど。

繰り返しますがこの1~3は僕の素人考え、でも誘われても断る、相手と二人きりとか断れない状況にならないのが大事なのかなーと思います。

そして何より、薬物を止める努力を始めた方、立派だと思います。

薬物と貧困は切っても切り離せない関係にあると思うので、ついでに湯浅誠「どんとこい、貧困」について簡単にご紹介を。

こちらも児童向けに書かれた本で、初版が2009年と少し古く、「ネットカフェ難民」など貧困の可視化がようやく進んだ頃の一冊です。

けれどいわゆる「自己責任論」の誤りや、なぜセーフティネットが必要かなどが、分かりやすい言葉で解説してあります。
セーフティネットがあれば立ち直れる人も2009年時点では立ち上がれず底まで落ち、しかし落ちた人を見捨てればどういうことになるか、僕たちは何度も悲しい事件を通じて知っているのではないでしょうか。

最後にナチのホロコーストを生きのび、「夜と霧の間で」を叙した精神科医V.E.フランクルが「それでも人生にイエスと言う」で残した言葉を。

パーセンテージからするとごくわずかな不治の患者を殺害するという手段に頼らざるをえないほど、経済的に悪化している国家は、経済がどっちみちとうの昔にだめになっているのです。

現状を認めつつ、何ができるのか。やれることやるべきことをコツコツとやります。

 

(初出・シミルボン)

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